歯周病の症状・予防・治療

歯周病と歯周病菌とは

歯周病とは、細菌の感染により歯ぐきや歯根が埋まっている歯槽骨が炎症して、徐々に壊されていく病気です。
炎症が歯肉で留まっている状態を「歯肉炎」といいます。
歯槽骨まで炎症してしまった状態を「歯周炎」といいます。
炎症の進行するペースは、個人差があり、一般的に20歳前後から歯肉炎が始まり、10?20年かけて悪化していきます。
いろいろな自覚症状がでてくるのは30歳代後半以降で、初めて歯周病だとわかるようです。
歯周病の初期は、特に目立った症状がありません。
ゆっくり進行していき、そのまま放置していくと最終的には歯が抜けてしまいます。
早いうちに見つけて、対処することで治すこともできます。
ですから、歯周病かなと思うような兆候や症状を感じたら歯科を受診して、検査を受けることが大切です。

また、歯周病の原因の細菌「歯周病菌」は、口の中に300種類以上存在しているといわれる細菌のうちの10数種類です。
歯周病菌は、集まって固まり、塊となって歯の表面に付きます。
この塊を「プラーク(歯垢)」といいます。
時間が経つと唾液中のカルシウムなどがしみこんで「歯石」になります。
プラークをそのままにしておくと、歯周ポケットという溝ができ、進行していくとその歯周ポケットがだんだんと深くなっていきます。
そして、さらにその溝にプラークや歯石が入り込んでたまります。

歯周病菌は、空気を嫌う性質があるので、歯周ポケットに入り込むほど活発に繁殖します。
組織を壊す酵素や毒性の強い物質を放出し、炎症を起こし、歯槽骨を溶かしていきます。
また、歯石は表面がザラザラしているため、プラークが付きやすく炎症を引き起こしやすくなります。

歯周病の進行と症状と検査

歯周病は、まず歯肉炎になり、歯周炎と進行していきます。
歯周炎は、症状別に3段階に分けられます。
歯肉炎・・・歯肉が炎症し、歯肉が腫れ、歯磨きをすると出血しますが、ほとんど痛みはありません。
軽度の歯周炎・・・歯周ポケットの深さが深くなり、歯槽骨が溶け始めます。
中度の歯周炎・・・軽度の歯周炎以上に歯槽骨が溶けた状態になり、歯肉が後退して歯が長く見えたり、グラついたりします。また、「腫れ」「痛み」「出血」「膿が出る」などの症状が時々起こります。
重度の歯周炎・・・ほとんど歯槽骨が溶けてしまい、歯のグラつきが中度の歯周炎以上にひどくなります。
慢性的に「炎症」「歯槽骨の溶け」はあり進行していき、さらに「腫れ」「痛み」「出血」「膿が出る」などの急性発作の症状も頻繁に起こるようになります。

ちょっとでも気なる症状がある人や特に何も症状がない人でも定期的に歯科で診てもらうことも大切です。
歯周病かどうかの検査は次のようなことを調べます。
<歯周ポケットの測定>
細い棒状の器具を歯周ポケットに入れて、深さを測定します。
<歯のグラつきを調べます>
歯の1本1本を歯科医が触れてグラつきの程度を診ていきます。
<エックス線撮影>
歯槽骨の状態を調べます。
このような検査をして、どの段階の歯周病なのか診断します。

歯周病チェック

まず、自分が次の6つの項目のどれかに当てはまるかチェックしてみてください。
1.朝、口の中がネバネバします。
2.口臭があります。
3.歯肉が腫れることがあります。
4.歯を磨くと出血します。
5.歯が伸びたように見えます。
6.グラつく歯があります。

<解説>
1は、口の中で細菌が増加して、粘着性物質を出していると思われます。
2の口臭は、細菌が口の中で多いと強くなりやすいです。
1と2は、歯周病の可能性が高いので、早急に歯科を受診して検査することをおすすめします。
3と4は、歯肉炎の症状です。
5と6は、歯周炎の症状です。
3?6のどれか1つにでも当てはまる場合は、すぐに歯科を受診することをおすすめします。

歯周病が体へ及ぼす影響

歯周病の歯周病菌が血管に入り込んだり、炎症を起こしたりと体にいろいろな悪影響を及ぼす可能性があります。
どういった悪影響を及ぼすのかいくつかの症状をまとめました。
<心内膜炎>
「心臓弁膜症」の人や「人工弁」を使用している人は、弁の周りの血流が悪くなりやすいです。
歯周病菌がそこに付くと、心内膜で歯周病菌が増え、「心内膜炎」を起こす場合があります。

<動脈硬化の促進>
血管壁に歯周病菌が付くと、血液中の白血球などがそこへ集まるため、動脈硬化を促すとされています。

<糖尿病の悪化>
歯周病菌のよって炎症すると「TNFα」という物質を作り出します。
このTNFαによって、膵臓から出る「インスリン」の働きが妨げられてしまい、糖尿病が悪化してしまうとされています。

また、歯周病を起こしたり、悪化させてしまう原因として、「喫煙」「過労やストレス」などがあります。
習慣として喫煙している人は、喫煙してない人より歯周病を起こしやすいようです。
また、喫煙をしていると歯周病も治りにくいことが解明されています。
たばこのニコチンによって、血管を収縮させる作用があり、血流を悪くし炎症をひどくさせるそうです。

そして、過労や睡眠不足により体力が低下して、過剰なストレスもさらに加わると、抵抗力に影響を及ぼし、低下します。歯周病を悪化させないためには、規則正しい生活習慣を送り、ストレスをためないことです。

プラークコントロールとは

歯周病の人の口の中には、健康な人の10倍以上の歯周病菌がいるとされています。
さらに、歯磨きをしないでいると、より歯周病菌が増加します。

歯周病になる原因は、歯周ポケットにプラークがたまることで起こります。
ですから、その原因となるプラークをできるだけ取り除くことが、歯周病の基本的な治療法となります。
そのプラークを取り除く治療のことを「プラークコントロール」といいます。

プラークの付着している部分などによって、自分で行ったり、歯科で専門的に行ったりします。
<自分で行う部分>
歯ブラシが届きやすい部分です。
歯肉から上の歯の表面などです。

<歯科で専門的に行う部分>
歯肉より下の歯周ポケットの部分です。
歯周ポケットに付いているプラークは、歯ブラシが届かないので歯科で行います。

自分でするプラークコントロール

毎日、丁寧に歯磨きをするだけでもプラークを取ることができます。
また、歯肉をマッサージする「歯ぐき磨き」も忘れてはいけません。
歯ぐき磨きすることで、歯肉の血行をよくします。
ただ磨けばよいということでもありません。
磨き方によっては、逆に歯肉を傷つけてしまったりすることもあります。

歯磨きするにあたって、3つのポイントがあります。
1.歯と歯肉の間に毛先を45度の角度で当てます。
歯と歯肉の間は、特にプラークがたまりやすいところです。
この歯と歯肉の間に毛先を当てることで、プラークを取り除くのと同時に歯肉のマッサージもできます。

2.歯ブラシを横に細かく振動させます。
歯ブラシを大きく動かしてしまうと、プラークが残ってしまいます。
また、歯肉が大きくこすられてしまい、傷つけてしまうこともあります。

3.痛くない程度の力で磨きます。
力を強く入れて磨くと、歯肉を傷つけてしまい、出血してしまう可能性もあります。
また、弱すぎてもプラークが取れにくく残ってしまいます。
目安としては、「痛くなく気持ちがよい」程度で磨いてください。
そして、歯ブラシの持ち方は、鉛筆を持つようにすると余分な力が入りにくくなります。

歯磨きは、食事後以外にも間食後や飲み物を飲んだ後などにも磨くようします。
理想は、歯磨きの毎回1本の歯の表裏20回ずつ磨き、およそ10分間で全部を磨くことです。
しかし、難しいことでもあるので、最低でも1日1回はこの理想のように磨いてほしいものです。
また、効率よく磨くために、「電動歯ブラシ」「音波歯ブラシ」を利用するのもよいと思います。

効果のある歯磨きの仕方

歯磨きするにあたって、3つのポイントがあります。
1.歯と歯肉の間に毛先を45度の角度で当てます。
2.歯ブラシを横に細かく振動させます。
3.痛くない程度の力で磨きます。
また、歯ブラシを選ぶときは、植毛部分がなるべく小さいもので、硬すぎないものを選びます。
そして、歯肉の状態によっても使い分けをします。
歯肉が腫れているときは、柔らかい歯ブラシを使用して、腫れが改善されたら普通の歯ブラシを使用します。

さらに、歯磨きは上も下も決まった順番で磨くようにします。
そうすることで、磨き残しがなくなります。
<歯の磨き方>
1.左側の奥歯の後ろ側を磨きます。
2.左側の奥歯の表側を磨き、前歯まで表側を磨きます。
3.右側の奥歯の後ろ側を磨きます。
4.右側の奥歯の表側を磨き、前歯まで表側を磨きます。
5.右側の奥歯の裏側から順に前の方まで磨きます。
6.前歯の裏側は、歯ブラシを縦に動かし磨きます。
7.左側の奥歯の裏側から順に前の方まで磨きます。

歯科で受けるプラークコントロール

歯科を受診して「歯周病」と診断された場合、歯科医や歯科衛生士から次のような専門的のプラークコントロールを受けます。
1.プラークや歯石を取ります。
歯ブラシが届かない部分や磨き残しなど、歯周ポケットの中に入っているプラークや歯石を専門の器具「スケーラー」を使用して取り除いていきます。
スケーラーは、歯石を「手動でひっかいて取り除くもの」と「超音波振動を用いて取り除くもの」の2種類があります。

2.洗浄します。
抗菌薬を使用して歯周ポケットの中の洗浄を行います。

3.歯の表面をみがきます。
研磨剤を用いて、普段の歯磨きでは取れないプラークを取り除きます。
あわせて、食べ物や飲み物などによるステイン(沈着した色素)も落とします。
また、歯磨きの指導もしてくれます。
歯科で受けるプラークコントロールは、定期的に受ける必要があります。
健康な人の場合、少なくても1年に1回、歯周病の人や以前歯周病だった人の場合、3?6ヵ月に1回受けるようにします。
歯科で受けるプラークコントロールによって歯周病が改善したら、その状態を保つことが大切です。
そして、毎日丁寧に歯磨きをして、定期的に受診して歯周病を再発させないように予防していきます。

歯周病の治療方法

歯周病は、歯を失ってしまう原因になります。
最近は、手術や再生療法によって歯を残せることができるようになりました。
まず、検査を受けた上で基本治療を行います。
基本治療とは、「自分自身で行うプラークコントロール」と「歯科で行うプラークコントロール」です。
そして、再検査を行いその後の治療法を決定します。

次に歯周病の進行別の治療をまとめました。
<歯周炎>
歯周ポケットの深さが3mm以内で、歯槽骨が溶け出していない状態です。
歯磨きによって治ることもあります。

<軽度の歯周炎>
歯周ポケットの深さが4?5mmです。
歯槽骨が溶け始めている状態です。
基本治療を行うことで進行を止めることができます。

<中度の歯周炎>
歯周ポケットの深さが6?9mmです。
歯槽骨がおよそ1/3?2/3溶けてしまい歯がグラつきます。
プラークコントロールだけでは、進行を止められません。
治療法としては、外科手術や再生療法が必要です。

<重度の歯周炎>
歯周ポケットの深さが10mm以上です。
歯槽骨が2/3以上溶けてしまった状態です。
この状態にまでなってしまうと歯を残すことも難しいので、抜歯や失った歯を、義歯を用いて補う治療を行います。

フラップ手術とは

フラップ手術とは、歯肉を切開して、隠れた歯石を除去することです。
基本的な治療で歯石を除去する場合、歯周ポケットの深さ4?5mm程度までが限界とされています。
しかし、歯周ポケットがもっと深く、奥のほうの歯石が除去されないままでいると、歯周病が進行します。
そこで、基本的な治療で歯石が除去しきれない部分の歯石を除去するために行われるのが「フラップ手術」です。

歯周病が軽度から中度ほどであれば、フラップ手術によって歯周病の進行を止めることができます。
手術時間は、およそ1時間?1時間半です。
特に、入院などする必要もなく、一週間後に抜糸をします。
この抜糸するまでの期間、手術した部分の歯磨きをしてはいけません。

また、十分な手術の効果を得るためには、手術前にプラークコントロールをしっかりと行う必要があります。
ある程度歯肉の炎症を改善したり、口の中の環境をきちんと整えておきます。
フラップ手術後は、経過を観察することが大切なので、およそ2ヵ月間の経過を観察します。
手術の回数などによっても違いますが、手術前後あわせて治療期間は、1年程度になります。

再生療法

再生療法とは、歯周病で壊された歯槽骨などの組織を、細胞や組織そのものが持っている再生の働きを利用して、再生させる治療法です。
主な再生療法は、「GTR法」「エナメルマトリックスたんぱくを使用する方法」などです。
これらは、同時にフラップ手術を行います。
フラップ手術だけを受けるより、再生療法を併用するほうが歯槽骨などを再生させるのに効果的です。

再生療法の「GTR法」「エナメルマトリックスたんぱくを使用する方法」について次にまとめました。
<GTR法>
フラップ手術の場合、歯肉を切開します。
手術後傷口が治っていく段階で、歯肉表面の上皮が内側に入ってしまいます。
そのため、十分に歯根膜や歯槽骨の再生できません。
そこで、人工の「遮へい膜」を歯肉の内側へ置きます。
すると、歯肉表面の上皮が内側に入らないため、歯根膜や歯槽骨の再生するための空間が確保できるのです。
このGTR法は、高度な技術を必要とし、手術時間はおよそ2時間です。
また、GTR法はどんな状態にでもできるというわけではありません。
「遮へい膜を覆うだけの歯肉がない」「再生する働き以上に歯槽骨が溶けてしまっている」などの場合は、GTR法は適していません。

<エナメルマトリックスたんぱくを使用する方法>
エナメルマトリックスたんぱくとは、組織を再生する働きをもつたんぱく質です。
新しい歯を作るときにとても重要です。
歯周病の再生療法の場合、動物の歯胚から取り出され作られたジェル状のものを使用します。
このエナメルマトリックスたんぱくを使用する方法では、フラップ手術で歯石を取った後に歯根表面にたんぱくを塗ります。
そうすることで、歯根膜や歯槽骨の再生がされるのです。
手術時間はフラップ手術と同じくらいで、効果はGTR法と同じくらいあるといわれています。



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